北斎~画狂老人卍
高校時代の友人と久しぶりに江戸東京博物館に行きました。
これで2度目の来館ですが、最初に行ったのは15年くらい前かな、と思っていたのですが、開館が1993年3月とのことなので記憶は間違っていませんでした。ポスターなどを良く見ると「江戸東京博物館開館15周年特別展」となっておりました。
この博物館ができたばかりの頃に行った時は両国駅からずっと行列になっていて、入館するのにかなり待った記憶がありますが、今回は閑散としていました。
今回の目的はここで開催している特別展「北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-」を観るためです。
もちろん企画展「北斎漫画展」も楽しんできました。
葛飾北斎といえば「冨嶽三十六景」や「北斎漫画」などが良く知られています。
江戸の絵師として名声を得、人気があったと思われますが、友人が「あの時代に九十歳まで生きて、毎日絵を描いていたすごい人!」と絶賛するのもうなずけるほど、多彩で多作で技術もすごいのです。
今回は江戸時代にオランダやフランスなど海外に渡っていた絵の里帰り、国内外の北斎とその娘、工房の弟子達の作品が集められて展示されています。
北斎といえば版画、と思いがちですが、肉筆の風俗画も多く描いていて、それらがオランダに渡ったそうです。
その肉筆風俗画がずらっと並んでいましたが、友人と私は最初の1枚目からその絵に釘付け!
その時代にはロットリングもエアブラシもコピックもシャーペンもケシゴムもないはず。なのに、精巧な筆致で、筆の1本の毛で迷いもなく引かれた繊細でシャープな線、美しい色彩と技法や文様の絢爛豪華なこと!!!
スクリーントーンやパソコンのテクスチャ機能を使えば今では瞬時に張り込めてしまうような柄が丁寧に丁寧に描き込まれているのですから驚きです。
着物の艶が色の濃淡で表されていて、溜息が出るばかりです。
構図もこれが日本画なのだろうか、と思ってしまうほど遠近感のあるものがあります。
着色の技法も構図も西洋画のようなものがたくさんあり、鎖国時代の日本において、最先端を行っていたんだなぁと感心してしまいました。
そしてなんといってもまるで動きや風を感じるほど、市井の人びとの活き活きとした姿の素晴しさです。
風が吹いてきて着物の裾やかぶっている笠を押さえたりする姿、馬を駆る侍、駆け回る子供たち、そしてその側に描かれる野良犬。
どれもこれも形式的な浮世絵とはまた違っているのに、浮世絵として充分に見ごたえのあるユーモラスな姿なのです。
特に「こんなに大きなものはないのでは?」と思われるほど大きな碇や祭りの提灯には面白さを感じずにはいられませんでした。
「冨嶽三十六景」も多く展示されていました。こちらは版画なのですが、当時の版画技術の高さを改めて思い知らされました。
版画の他に私家版としての摺物と呼ばれる豪華な作りの版画があり、こちらは様々な意匠を凝らしてあり、金銀が施されていたりと興味深いものばかりでした。
当時の印刷技術はめざましいものがあり、黄表紙と呼ばれる読み物なども絵はもとより、文字が木版であるとは思えないほど精巧にできています。
弟子に教本として渡すための出版物「絵手本」や職人さんの為の図案集などもあり、またスケッチ画集として有名な「北斎漫画」なども版画として出版されているのでした。
とにかくどれだけ描けば気が済むのかと思うほど多作で、どれも画力の高さを感じるものばかりでした。
北斎は生涯30回もの改名をしたと聞きます。
晩年は「画狂老人卍」という号を名乗っています。雅印にはおしゃれにも富士山をあしらったり、百歳まで生きるつもりでいたのか亀の甲羅を模して「百」と表したものを使っています。
それもまたなんともお洒落で良いのです。
企画展の「北斎漫画展」は実際に使われた版木も一部展示されていました。
北斎漫画で特筆すべきは「悪玉踊り」についてでしょうか。
「悪」という字が書かれたお面をつけた人が踊る、その踊り方を示したものですが、なんともユーモラスで一度見たら忘れられません。
これのクリアファイルがあったら買ったのにー。
売れ筋の「冨嶽三十六景」の赤富士や「神奈川沖浪裏」のあの高浪の版画のあしらわれたグッズはたくさんあるのですが、それは外国からの観光客向けのようで詰まらないのですが・・・、一応購入しました。
そして「画狂老人卍」の号が見えるクリアファイルがかろうじてあったので購入しました。
3時間あまりも鑑賞したので、他にもいろいろと語りたいことがたくさんあったのですが、今回はこのへんで。
江戸東京博物館はバブル期に建てられたこともあり、無駄に広いなぁと思いました。展示会場は広くて大きくて良いものがたくさんあって、とてもいいのですが、御土産コーナーが分かっただけでも3箇所もあるし、受付コーナーやなにやらが広い部分が多かったです。
隣には国技館もあり、大相撲初場所のため、各部屋ののぼりが並んでいて、相撲好きな私と友人は「次はここにも行きたいねぇ」と話していました。
ところで、北斎は没後すでに150年以上なので、作品そのものの著作権の保護期間が満了しています。
国立国会図書館ではデジタルライブラリーで「北斎漫画」が観られます。カラーではないのですが、これはすごい。
近代デジタルライブラリー
「北斎漫画」
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